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丸の内で働く産廃マンこと、株式会社船井総合研究所 廃棄物ビジネスコンサルティンググループ グループマネージャーの貴船です。日常のコンサルティングを通して、そこはかとなく記していきます!

2022年4月26日 10:31 AM

廃棄物処理業の脱炭素経営⑦「ウチの会社には関係ない」の間違い6

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 前回から続く、「ウチの会社には関係ない?」の間違い、についての続きです。
⑥地域に貢献できるのか?の続編で、国内材での木質バイオマス発電の課題についてです。
 国土の2/3が森林(2500万ha)で森林蓄積量は52,4億㎡と30年前から倍増しており、毎年1億㎡増加。人口林(1000万ha)も増加傾向となっております。森を整備する為の伐採した木々等(未利用間伐材)については、木質バイオマスエネルギー材として、木質チップや木質ペレットや薪等の利用が増えているものの、その収集・運搬コストからも林内放置が増えているのが現状となっております。そして未利用間伐材約800万t発生(約2000万㎡相当)中利用率9%程度であり、工場残材約640万t(利用率97%)、建設発生木材(利用率94%)と比べ、大きく下回っています。それ故に、一本の樹から、建材原料等となる製材や集成材、紙の原料となる低資材、ボイラー等の燃料となる木質バイオマス等にて、最後まで使い切る「カスケード利用」が求められています。 
(1)国内材活用の課題
【コスト低減】発電コストの7割を占める燃料コストの低減と、燃料材が重要な収益機会になりつつある林業者の森林経営の安定化を両立し、FIT制度に基づく買取期間終了後の関係者共倒れリスクを回避するために、森林の管理手法の変革が求められています。特に現状、建材向けに最適化されている木材の運搬・加工システムのエネルギー利用向けの最適化や、広葉樹や早生樹の利活用などを含め、どのような取組が考えられるか
【持続可能なバイオマス発電の為の実態把握】木質バイオマス利用を拡大する上で、持続可能性は確保しつつ、どのようにバイオマス燃料のコスト低減・供給量拡大を進めていくべきかを考えていかねばなりません。特に、ライフサイクルGHG排出量の抑制の観点から、チップ・ペレットの加工方法及び輸送距離の影響が大きいことを踏まえ、適正な木材の流通・利用範囲の検証、そして森林から発電所までの実態把握の仕組みが必要となっております 
(2)コスト低減課題 
【林業】林家数林業経営数及び同保有山林面積が2015から2020の5年間だけでも大幅な減少が続いています(林業数は828,972戸から690,047戸、山林面積は5,174,793haから4,590,521ha。経営体では87284が34001と半減以下となり、内訳として森林組合77692が22776、民間事業体4028が2015)。林業(及び林業政策)は、取り扱いが容易で建材など付加価値の高い用途で利用できる針葉樹の育成・管理・利用をメインに展開されています。このため、燃料用に用いられるのは、間伐材や林地残材など、建材用途などに利用できなかった木材の副次的利用が中心となっています。一方、燃料用途の木材が副次的な位置づけ(Ⅽ材 枝等曲がり材等)であるために、建材需要動向に左右され供給量の見通しが立たないこと、針葉樹建材向けに形成された生産・輸送システムが燃料向けには過剰で非効率等の課題があります。こうした背景のもと、特に大規模発電事業者では高くても量が安定する輸入木材を活用するような動きも見られることから、国内で活用可能な森林由来の木質バイオマス資源を如何に安定的に供給するかが課題となっています。
【広葉樹・早生樹(コウヨウザン)の活用等】
広葉樹は、日本の森林蓄積の約3割を占めるながら、搬出の難しさと曲がって育つ性質があることから建材としての利用は不向きでした。しかしその性質を生かして一部の木工製品向けや製紙チップ向けに活用されている現状があります。早生樹は、成長が早く、萌芽更新するものもあることより、地拵/植栽/下刈作業が低減可能となり、育林作業量の減少が期待されています。当初から燃料用途の森(エネルギーの森)を目指し、計画的に広葉樹・早生樹の育成を行った場合、建材価値を高める枝打ちや間伐を行うコストが削減(労務費・育林費・生産費等が2/3)、早成樹は成長が早く出荷までの期間が短くて済む(期間減少分の維持費削減)との効果が見込まれています。林業者にとっては広葉樹・早生樹の商業利用化による新たな収入源の確保収穫サイクル向上による収益向上に寄与し得るなど、林業と発電事業の持続可能な共生の構築も期待されています。
【燃料品質の問題】
燃料品質にばらつきがあると、バイオマス燃焼炉内の温度が安定せず、結果として設備利用率が低下するなどの支障が生じたり、燃料品質を調整するための手間が発生したりといった問題につながります。このため、発電事業者としては品質が安定したバイオマス燃料を調達できることが望ましいが、現状では、バイオマス燃料は、発電所が長期契約により、燃料品質(水分量等)によらず一定の購入価格で取引されている場合が多いものです。木材業者からしても、木材の搬出工程における天日干しによる乾燥や屋根付き保管場所の確保等により、燃料品質を向上させることにより差別化を図れるようになり、林業者の持続可能な経営に貢献できる可能性もある。一方、現状では、燃料品質を統一的に評価する仕組みが存在しないことから、木材業者の努力にも関わらず、市場において適正な評価を受けることが難しいとなっております。
【バイオマス燃料の流通・利用範囲における課題】
木質バイオマス燃料木材を、栽培、加工、輸送等する過程において化石燃料の使用量が大きいと、結果としてライフサイクルでの温室効果ガスの排出が看過できないほど大きくなる可能性も存在しています。また、燃料用途での木材利用が進むことで、既存の木材利用との競合(エネルギー以外の用途での原料需給逼迫)が発生する懸念も存在しています。現状は林野庁ガイドライン「木材・木材製品の合法性、持続可能性証明のためのガイドライン(平成18年2月)」に基づき、サプライチェーン上の由来証明を行っていますが、市場流通量などに関する情報が公開されておらず、その実態が不明瞭でもあります。持続可能性の確保に向け、ライフサイクルでの温室効果ガスの排出の動向や、木材利用の競合の状況を把握する観点からは、森林から発電所までの実態把握の仕組みが構築される必要があります。