前回に続く、廃棄物処理業の事業可能性調査についてです。
マクロ的に考えれば、人口減少の日本において、廃棄物の絶対量は減少していきます。現在の出生率から見ても2050年9500万人程度の日本においては、0.75掛けの経済が待っています。これから26年後なので、まだまだ時間の猶予はありますが、真綿に絞められていくようにジリジリと経済が減っていくのが日本です。しかし全てが0.75掛けになることはなく、業界によっては消滅するようなものもあり、また企業数は半分以下となっていくことも想定されます。
廃棄物も同様です。総量で捉えられることは多いのですが、一方で産廃業者が市場として見ることが出来る市場は、例えば現在の3.7億tは発生量であり、経済的な市場規模とは異なっております。所謂カテゴリーとして、産業廃棄物になるものの総量であり、マーケットではありません。委託量として外部に出ているものが産業廃棄物市場であり、そのなかで将来の数量と市場規模を予測する必要もあります。
発生している品目の中身、また発生している業種を見ていくと、更に数量は厳しく見る必要もあります。電力や水道業は人口減少との比例が想定されますが、農業での減少幅も無視できません。建設土木も同様で、人口比と比例する市場が生まれることも困難であり、戸建てでさえも人口比例と異なっていくでしょう。製造業であっても、勝ち組と負け組が明確になりつつある日本のものづくりにおいては、同様の発生が期待できません。
更に地方市場では、この変数は較差が広がっていき、国内平均との比例には何も意味をなさないものとなっていくでしょう。今後も地域の較差は広がっていき、都道府県別将来人口予測の通り、厳しく見ざるを得ないマーケットが存在しております。許認可業であるからこそ、この考え方が必要です。
つまり将来市場には、かなり厳格な市場予測が必要となっております。前回にも少し触れましたが、勝てる市場で勝てる商品でいることが不可欠です。産廃市場においてのマーケティングは、過去より許認可に左右されることによって、エリア戦略が阻害要因にもなっておりました。それ故に限定された商圏での戦い方が戦略ストーリーに欠かせなかったと思います。商圏内での発生量と競合状況、そこでの獲得ストーリー。しかし今は、そうではありません。過去の成功事例が通じなくなっています。
自社商圏内で、今後10~15年の市場を見極めることがスタートでもあると思っています。つまり過去にあったような新たなリサイクル施設を検討しようとしても、市場としての条件が揃わないことが多くなっていくことでしょう。外部環境の変化について、相当に厳しく見ていなければ楽観ストーリーでさえも難しくなっていくことになっていきます。
つまり廃棄物処理業にとって、何を新たに始めるかではなく、自社の市場がどうなっていくのかが、これからの大事な経営戦略にもなっていくことでしょう。事業可能性調査において、先ずはマクロマーケットの考え方も重要な位置づけとなってきております
- 2024年9月23日「廃棄物処理業の事業可能性調査(Feasibility Study)①」
- 2024年9月23日「廃棄物処理業の2024年問題⑨(最終回)」
- 2024年9月23日「廃棄物処理業の2024年問題⑧」
- 2024年9月23日「廃棄物処理業の2024年問題⑦」
- 2024年9月23日「廃棄物処理業の2024年問題⑥」