丸の内で働く産廃マンのブログ|産廃WEB|船井総研

丸の内で働く産廃マンこと、株式会社船井総合研究所 廃棄物ビジネスコンサルティンググループ グループマネージャーの貴船です。日常のコンサルティングを通して、そこはかとなく記していきます!

2023年11月24日 12:16 PM

廃棄物処理業の2024年問題①

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建設業、物流業では2024年問題がクローズアップされて久しいですが、廃棄物処理業でも収集運搬業も同様の課題を抱えていることはご承知の通りです。
ただ、前述の2業種とは背景が異なっていることも事実です。
建設産業では残業制限は勿論課題ではあるものの、高齢化による技術者不足が大きな課題となっており、残業を制限することや採用難だけではありません。CCUS(建設キャリアアップシステム)の導入もあり、人工の頭数を揃えることが大事でもなく、またインボイス制度の導入にて一人親方の減少もありますが、やはり熟練工の課題が大きくなっております。国交省もi-Constructionも進め、その熟練工不足を補おうとしていますが、エリア差はあるものの人手不足は顕著であり、人工代も高騰していっております。更に中小企業での過大は施工管理者不足も抱えており、中途採用市場は高騰しており、加えて職長不足からも現場を回せられない課題も抱えています。
物流業は収集運搬業と似ていながらも一番の違いは、稼働率では無いでしょうか。車輛と人員数のバランスとして、物流業では車両数が人員数を上回りますが、廃棄物処理業ではその逆となります。更に24時間稼働を目指すのに対して、廃棄物処理業では半分以下となってしまいます。そして何よりも廃掃法によって、物流業のような3PLや倉庫活用やモーダルシフトの検討もできません。
但しドライバー採用の視点では同様の採用難となっている為に、人材採用の面では競合となっていることも事実です。
廃棄物処理業の2024年問題は建設・物流業と分けて考えていく必要があります。採用が難しいことで共通のように思われますが、それは顕在的な課題であり潜在的な課題はそれぞれ異なっております。
廃棄物処理業では、目指すべき形が収拾運搬の最適化になると思っております。これはルートの最適化ではなく、業種としての最適化を指していきます。
近年、都市部では一般廃棄物や医療系廃棄物でも、この最適化として各社のバーターも進んできました。つまり運搬効率が悪い、運賃が合わない等は同業他社や競合に引き渡すことも続いてきました。拡大戦略の際は、競合に負けずに新規顧客を獲得し続けることを進めてきましたが、それは点を面にする為であり、面にならなかった点が運搬効率での重しになっていきました。その為だけで走ること、燃料代も人件費も上がる中でな当然儲かる筈などなく、荷を引き取るだけで運搬費としては赤字が確定していくものでした。中間処理場として運搬は荷を確保する為のサービスと割り切り、荷が集まれば良いとした過去もありましたが、顧客別や物件別に紐解いていくと、処理費が安く設定されているものでは赤字になっていることもあります。全社収益に余裕がある際は気にならなかったことも、先の通り原価が上がっているなかでは、とても目を瞑るようなことも出来なくなっています。
廃棄物処理業の収集運搬の最適化とは、自らのビジネスモデルを否定することから始まります。
これは既に先を行く、物流業でも同様のことが始まっております。カーボンニュートラル化が進む中では、走れば走るだけCO2を排出していきます。製造業を中心にSCOPE3削減についても具体的に動き出した企業では、既に物流の最適化が始まっております。これは所謂看板方式の脱JIT(JUST IN TIME)も念頭にしなければならなくなっており、更にCFP(Carbon Footprint of Products)を求めていく企業では、細部にまで入っていくことも想定されます。
SCOPE3には上流下流ともに廃棄物も含まれており、他人事では無くなっています。廃棄物処理業の2024年問題は人材採用や残業制限だけに囚われず、ビジネスモデルの変革から取り組む必要が出ているのです。

次回へ続く

2023年5月26日 11:42 AM

廃棄物処理業 2023年の時流⑤ 2023年に実践頂きたいこと

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2023年の時流についての最終回です。今回は2023年に実践頂きたいことです。

1.サーキュラーエコノミー市場で捉える
廃棄物減少時代において、「循環性の高いビジネスモデルへの転換」「市場・社会からの適正な評価」「レジリエントな循環システムの早期構築」を読み解き、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)市場での自社を位置づける。必要とされるリサイクル事業を自社の経営資源が活用可能か、運搬業務で如何に携われるかを決めること。サーキュラーエコノミーの追求が脱炭素化でもある

2.短期的なコスト見直しと改善
(1)取り組みの背景
・顧客からの値下げ要請、また顧客からの選別が始まる準備をしなければならない
・人件費とエネルギーコスト、原材料関連等各種販管費増は継続される為に収益性は圧迫していく
・攻める機会は新たに生まれる為に、その為の戦える準備が必要
(2)取り組みの方向性
・不採算顧客の洗い出しと見極めを早期に完了
・運搬関係は燃料価格も下がらないことから、負担も大きくなることが想定され、運搬可能エリアと運搬効率改善交渉を顧客と早期にスタート
・二次処理先の新たな選定
・運搬業務の分離・バーターも検討
・少額のコストダウンは一旦先送りして、インパクトの高いものに集中をすること

3.中期的な生産性改善
(1)取り組みの背景
・業態転換について、業界的にも多くは変わっておらず小幅変更のみとなっている。それもハードに頼ることと、属人性に頼ることによって変化が発生もしていない
・人時生産性を追求していくと、手法の変更では難しくなる為に、新業態の足掛かりを2023年は同時に進めていかねばならない
(2)取り組みの方向性
・人時生産性を全体で算出して追いかけていることは大前提であり、部門別までは最低限管理できるようにしておく
・業態は新規事業発想で捉え、時流適応の市場を捉えること。例えばGXや脱炭素市場と確実に伸びる市場があり、その市場内を冷静にSWOTで見極め、参入判断ができる一年として欲しい。業態は廃棄物や資源業から、例えば原料業に変換するレベルで検討を進めたい

4.営業のバージョンアップ
(1)取り組みの背景
・価格要請が増えること、需要量が増える時は、新たなサプライヤーを顧客が探す時でもある。自社にとっても脅威ではあるが、攻めの視点では機会でもある
・顧客のニーズもサプライヤー探しも変化をしており、訪問されたくない、必要な情報を的確に得たいとなっている
・過去からの新規開拓手法から脱するタイミングでもある
(2)取り組みの方向性
・先ずはターゲット選定とキーマンへの接触を試みる
・一点突破となる提案内容を設定
・ABMにて継続的な情報発信による接触と反応確認
・効果的なリアル接触(現地確認、現品確認、来社、自社工場見学、クロージング)
・訪問営業不要な仕組みを営業部門で実践する

5.DXのバージョンアップ
(1)取り組みの背景
・コロナ禍で、遅れていた企業のデジタル化は加速していき、この1年間だけでもコストダウンとアプリ間の連携も進歩している
・過去にシステム見積をすると高額であったものも、アプリで気軽に手早く安く導入できるようになっている
・IoT関連も進化しており、安く高性能化しており、過去に出来なかったことも可能になったことも増えている
(2)取り組みの方向性
・視点は生産性を上げることにて、「システムとしてやりたいこと」を明確にする
・アプリとして探してみて、基幹システムとの連携をカスタマイズできる会社(人)を探す
・IoT関連も進化しており、自社の「やりたいこと」からエンジニア会社に打診
・とにかく開発にコストと時間をかけず、直ぐに始めることができて、直ぐに変更できるものに軸を置く
・100点を構築しようとせず、70点をカバーできる範囲で考える(費用対効果)

6.採用と育成
(1)取り組みの背景
・人手不足感と採用難に再び戻り、ドライバー不足は慢性化していく
・若年層採用をしたいが、中型免許問題は続き、また働き方改革対応は迫っている為に、多少の余裕を持たせたドライバー人員体制でなければ対応できなくなる
・工場で、且つ残業の多い3K職場には人が集まらなくなっていく
・採用枠が増えることで異業種転職も増えていく
・ベテラン達の定年退職も続き、若手や勤続年数の短い人の育成が急務になる
・新卒系が会社に求めることも変化しており、対応は迫られる
(2)取り組みの方向性
・積極的な採用活動の再開にて、早期に欲しい層を獲得
・媒体も変化しており、費用対効果は見極めること(成果が出ないものは直ぐ止める)
・新卒採用は毎年ながら、有効な手法が変化しており時流適応は絶対である
・自社が欲しい技能職層(有資格者等)であっても新卒市場からの育成が、最も早く有効な手段にもなっていく・
・自社の育成システムを構築できた会社が中期的成長を可能にさせる

7.事業戦略の再構築
(1)取り組みの背景
・コロナ禍で人々の動きも変わっており、また脱炭素市場でルールとプレイヤーはゲームチェンジが見えつつある
・時流適応経営として、過去に囚われることなく事業戦略を再構築しなければならない
(2)取り組みの方向性
・自社本業のこれから10年について見直してみる。10年間で起こりうる機会や脅威に対して戦い方を改めて定める
・新規市場を伸びるブルーオーシャン市場で定める
・脱炭素市場は最低限でも取組を始める

2023年4月25日 11:25 AM

廃棄物処理業 2023年の時流④

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Ⅰ.2023年の考え方
2.廃棄物処理業経営
(1)リーディングカンパニー
 ・これまで業界特性として新たな参入は少なかったが、M&Aを通しての大手参入は続いていくことが見込まれる。
 ・事業承継難でのM&Aは小規模型が多く、事業者数の減少は緩やかにもなっている。
 ・大手同士の合併やグループ化も、これまで以上に進み、グループで広範囲をおさえていくことも想定される。
 ・地域特化型は変わらず強く、他地域からの攻略も上手く進んでいない。この傾向は今後も継続されるが、市場
  規模が縮小されるエリアもあり、今後の事業戦略は注意が必要となっている。
(2)設備投資
 ・設備投資について、業界上位は各社積極的になっており、事業戦略上においても不可欠となっている。
 ・収益性の高さは施設特性に左右されることは変わらず、また処理方法の大幅な進化が想定し難いことから、今後も水処理、焼却。最終処分場の優位性は高い
 ・既存事業の収益性からも、新規リサイクルへの取り組み意欲は各社高く、具体的に進める企業も増えてくる
 ・中堅以上でのエリア拡大は続く
(3)施設
 ・中間処理単体での事業別採算では多くがダウンとなっていく
 ・中堅以上での施設管理は人と手法ともにレベルアップを追求していく
 ・残業制限と人手不足、二次処理費上昇による採算性の悪化が各社ともに課題となり続ける
 ・エリアによっては中期的にも減少が想定される為に、老朽化によってメンテナンスコストが増加する設備では、新たな投資への懸念が拡がっていく
 ・資源売却益はプラスとなっているが施設の実力値では無い為に注意が必要である
(4)運搬
 ・ドライバー2024年問題への取り組みが急激に進み、不採算の運搬業務が精査されていき、他社とのバーターや顧客への値上げが拡がる
 ・採用難は23年だけでなく中期的に続く為に、雇用環境を整えることを前提として、採用にもコストを掛けて若手の早期育成が必要となる
 ・運搬業務志望者の減少と若年層の中型免許問題もあり、脱属人化とドライバー育成の定型化も必要となってくる
 ・配車の脱属人化によっての効率化とKPIによる管理の追求が必要となっていく
(5)DX
 ・業界に特化したデジタルツールも急激に増えず、進んでいる業界のものを転換していく必要がある
 ・人材不足と若年層増とベテラン退社によって、業務の効率化としてのデジタル活用の必要性が増していく
 ・デジタル活用での廃棄物新規事業開発には未だ時間が掛かる
(6)組織
 ・組織と人材に注力してきた会社は、そうでない会社と明確な差が生まれていく。管理者が育ち、若手が離職も少なく育成もできていることで、未来を描けるになっている
 ・離職者が増える傾向もあり、会社としての防止への環境整備(業務改善、休暇、賃金等)が必要となる
 ・今後の人材市場からも採用力と育成力は規模問わず不可欠であり、事業成長の実現性での成否にも関わり、そこへの時間と費用の投資が必要となる
Ⅱ.新たな取り組みの考え方
1.サーキュラーエコノミー
循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すものである。この考えの広まりは、3R以上に製造過程での減量化が進むことにもなっていく。先ずはプラスチックが主となっていくが、マクロでの減少方向となることを想定しておく必要がある
2.脱炭素
プライム市場の企業はTCFD賛同をしており、今後もSCOPE3のなかでの廃棄物はテーマとなっていく。その際に①発生抑制②運搬削減の視点があり、運搬では遠方へ運ぶことが懸念点にもなりうる。2030年迄の各社取組には注意が必要となる

2023年3月28日 12:03 PM

廃棄物処理業 2023年の時流③

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Ⅰ.2023年の考え方
1.廃棄物市場
(1)総量
 ・近年減少は進んだものの将来予測推定より下げ止まっている。海外への廃プラ還流、また建設関連の活況が続いていることもあり、市場感として減少感は感じない。
  製造業も円安と資源高、部材不足の影響が続いており、各種エンドユーザーの生産計画にも支障が出ているが、2022年単年での影響があっても、5年程度のスパン
  では大幅減少には繋がらないと見ている
(2)品目及びリサイクル
 ①廃プラ
  脱プラの方向は続き、商品開発も含め、国としても改善を進めていく意向は強い。しかし廃棄物の特性からも、製造時発生だけでなく廃棄段階まで発生量の減少には
  時差があり、10~20年程度の緩やかな減少が想定される。
 ②木くず
  着工数は維持が予想されるが、中期的には減少で見ておく必要がある。一方でバイオマス施設での木くずニーズは高く、円安の影響からも期待が大きいものの経済
  性にて市場流通には時間が掛かってしまう
 ③汚泥
  工場系は有機無機ともに現状維持は見込まれるが、顧客によっての撤退や移転も中期的に存在することを前提に考える必要はある。建設系に関しても維持は見込ま
  れるが、中期的には減少も想定する必要あろ
 ④廃油・廃酸・廃アルカリ
  工場系は汚泥同様に現状維持ながら、移転や企業・事業再編のリスクを常に前提にする必要がある
 ⑤ガラ
  需給バランスが常に課題にはなっているが、中期的な発生減を想定する必要がある
(2)品目及びリサイクル
 ⑥感染性
  コロナ禍で増量が続いたが、急激な減少にはならないものの減少傾向となるが、中期的には医療方針からも安定的な動きが想定される
 ⑦その他リサイクル
  食品、繊維、小型家電、包装、バッテリー、太陽光パネル等への技術革新と促進が拡がっていく
(3)施設
 ①焼却
  需要に対する焼却施設不足が2022年現在も続いており、同時に価格高騰も止まっていない。今後の建設見込に対しても、その建設迄の時間軸と施設への障壁からも 
  急激な改善は見込まれていない
 ②水処理
  需要も手堅く推移しており、収益性も含め中期的にも安定性が見込まれる
 ③RPF
  需給バランスと将来市場懸念は常にあるが、近年での急激な変化は見込まれず、一定の市場は維持
 ④破砕
  単なる破砕だけでの収益性は、これまで同様に上昇が見込まれ難い
(4)最終処分場
  管理型最終処分場不足は続いているが、設置量とのバランスによって残余年数に大きな変動は生まれていない。しかし変わらず過多ではなく、需給バランスとしても
  維持が続くことが見込まれる。それ故に需要側としては価格競争激化を想定して、如何に管理型最終処分場への搬入抑制に努められるかは必要となってくる

2023年2月24日 10:29 AM

廃棄物処理業 2023年の時流②

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廃棄物処理業 2023年の時流につきまして、前回から続きます

3.新規リサイクル事業
・廃プラへの取り組み意向は強く、ケミカル等にもチャレンジが続いている
・小型家電、食品、繊維等へのニーズも高く、サーキュラーエコノミーを意識した動きはみられる
・また将来の発生量を見込んで太陽光パネル、木質チップ等の参入も増えてきている
・一方で、処理単価高騰から焼却施設意向も変わらず高く、RPF施設検討も続いている
・脱炭素化をテーマとして動き始めている会社も増えている

4.投資について
・新規リサイクル事業や、事業拡張、M&Aへの投資は増加傾向になっている
・デジタル関連の投資も増加傾向となっている
・中堅以上では、人材関連投資として採用コストも上がっているが、残業制限によっての人員増と離職防止と採用推進力の為の人件費増となっており、教育関連の投資は過去からの取り組みレベルの維持が多い

5.DX
・電帳法やインボイス制度対応を機とした基幹システム検討が増えている
・DXの目的化が多く見られ、業務の一部をデジタル化する判断が多く、事業戦略を成し遂げる為のDXは、まだ多く見られない
・業界としてのDX化は導入期となっており、優先度は新規リサイクル事業の方が高くなっている
・一方で中堅以上は数値管理やKPI管理も進んでおり、管理方法での中小との差が拡がっている
・現場レベルでの活用として、工場や運搬でのデジタルツール導入も増えつつある

6.組織
・都市圏、地方問わず、採用難による人材不足が続いており、今後の人材動向からも改善の見通しが立たない
・新卒に切り替えた中堅以上では平均年齢が下がりつつあるが、補充採用型では定年者や高齢での退職での補充に苦戦が続いている
・この10年程、組織の改善に取り組めた会社では、確実のその効果も現れており、そうでない会社との企業力の差が拡がっている。特に管理職での差が取り組みの差にも
 なっている
・ドライバーの2024年問題が迫っており、車輛台数の多い企業では、みなし残業の廃止や時間管理の徹底、人員増への取り組みは進んでいる
・工場での人員問題は多く続いており、一部では過去からの余剰人員配置タイプから、優秀な人員配置への切り替えも始まっている
・シニア、パートも現業系では集まらないが、事務系は変わらず応募に対しての反応は良い
・営業マン採用も反応が薄く、募集コストばかりが掛かることが多い
・新卒採用に取り組んできた会社も、コロナ禍でのデジタル採用や早期インターンシップ型採用でも苦戦が見られている
・人材が障壁となって、事業戦略が上手く進んでいない姿は変わらず多く見られる

2023年1月25日 9:19 AM

廃棄物処理業 2023年の時流①

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1.産廃業の業況
(1)建廃系
・22年度は、コロナ禍が続き、前年からのウッドショックや資材遅れが続いたものの、大手及び宇中堅では数量、売上ともにプラスに転じた企業も多かった
・地域での着工数には差が出ているものの、大商圏は活況化しており、それなりのプラスへ。地方部ではエリアでの更に較差が拡がり、減少エリアも見られた
・処理費及び収取運搬費の値上げが出来た会社とそうでない会社では、前者も収益性は落ちているものの、出来なかった後者は厳しい結果となっている
・顧客としてもコストダウン意識は高まり、業者の使い分けが顕著に表れてきている。自社での選別精度は勿論ながら、資源物にもシビアになってきている
・管理型行き、焼却行き、またガラ等出口への課題も継続しており、収益性の圧迫と後送りの隠れ負債も散見される
・資源売却益はプラスに寄与しているが、事業としての収益性ではない為に差し引くと収益率ダウンが多く見られる
(2)工場系
・顧客業種でのバラツキはあるものの、総じてプラスに推移は見られている
・値上げについても積極的に取り組んできており、多くが受け入れられてきた
・新規顧客開拓が各種制限も続いた為に、コロナ以前よりも伸びが鈍化傾向となっている
・新規設備投資計画も表面化している
・作業が伴う業務に関しては変わらず高粗利とニーズが継続している
・顧客業種によって、企業再編や事業再編、国内外の移管も含めた工場移転等も発生しており、大口顧客の安定性が読みがたくなっている
・顧客の脱炭素化要望が表面化してきている

2.一廃業の現況
・コロナ禍においての店舗系では顧客休業や制限の影響も戻りつつあるが、撤退や閉店と新規開業のバランスは、以前の水準には至っていない
・大商圏では顧客のバーター等も続いており、不採算顧客と自社の得意となる商圏見極めが進んでいる
・大商圏と小商圏の較差は拡がり続けており、地方部では地元店舗の閉店とナショナルチェーンの進出鈍化によって、運搬効率の悪化による収益性ダウンが拡大
・値上げ交渉も一部では見られたが全国で拡がったわけではなく、燃料・人件費等の上昇も転嫁できていらず収益性に影響も出ている
・多くの管理会社が、既存分が閉店と撤退によってのマイナスと新規取り扱いでのバランス面で戻しきれていない

3.資本戦略
・コロナ前から準備をしていた上場予備軍、そして再編への取り組みが表面化している
・M&Aや資本再編も水面下で拡がっており、買いニーズに関しては、これまでの業界内だけでなくファンドや事業会社等業界外から拡大している
・上位は大手資本系が増えており、今後も事業成長の為にもM&Aは当然の手段にもなっており、中堅規模での再編が予想される
・合従連衡は、今後数年に渡って継続されていき、上位グループと中堅での差が拡大されていくことも想定される
・中小規模も事業承継難からの売却もあるが、多いという程でもないこと、また価値算定からも低いものが中心となっている
・協業やアライアンスムードも一時期より弱まっており、緩やかな繋がりが主にもなってきている
・この数年の結果、中堅以上では財務の健全性に重きを置くことも増えており、規模の追求よりも収益性の追求が見られる

4.事業戦略
・中堅規模以上では、近年続いた焼却等の大型投資も続いており、施設としての増強意向は高い
・エリア戦略では大手でも選択と集中傾向があり、中堅は拡大、小規模は縮小と成長戦略に差も出ている
・人材不足からも運搬部門の方向性は、戦略的発想だけでなく縮小せざるを得ないようにもなっている
・中堅以上では、値上げ要請も含め、顧客の選別が進んでおり、売上の拡大だけに拘らなくなってきている

次回に続きます

2022年12月20日 9:07 AM

特別篇 書籍12月24日発売「利益を最大化する脱炭素経営~中堅・中小企業はGXで生き残る!~」

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 これまで、当ブログでもお伝えし続けてきた脱炭素経営につきまして、書籍として2022年12月24日に発売されることとなりました。「利益を最大化する脱炭素経営~中堅・中小企業はGXで生き残る!~」株式会社船井総合研究所 カーボンニュートラル支援ユニット著として、日本能率協会マネジメントセンターより発売されます。
 内容としては、これまでの廃棄物処理業の脱炭素経営の視点から、もう少し広げており、中堅・中小企業が脱炭素という時流を如何に捉え、ビジネスチャンスを活かす為の入門書として記しております。
 
 2020年10月、日本政府は2050年までに「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」というカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。「排出を全体としてゼロ」とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「人為的な排出量」 から、植林、森林管理などによる「人為的な吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

この実現に向けて、世界では今取り組みが進められており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。政府も2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を掲げ、「経済と環境の好循環を作っていく産業政策が、グリーン成長戦略である」と定義しており、所謂GX(グリーン・トランスフォーメーション)にて2050年290兆円と雇用創出850万人を掲げています。

これまでは大手企業内での検討にとどまっている印象が強かったですが、今や中堅・中小企業にも脱炭素経営が求められる時代になっています。しかし、中堅・中小企業の経営者にとっては、「脱炭素も自社には関係ない」「そもそも脱炭素に取り組む必要性がイマイチ理解していない」「取引先からの圧力が徐々に強まっている中でまだ様子を見ている」「脱炭素経営の取り組み方がわからない」という感覚なのが実態です。

そこで本書では、上記のような経営者や経営管理層に対して、脱炭素経営の必要性、取り組むメリット、具体的な取り組み方を、コンサルティング現場からの事例を交えて提示します。これからますます脱炭素経営が求められるようになることは既定路線であるだけでなく、早く取り組むことで業績を拡大するチャンスでもあります。手間が増えるだけで実入りが少ないと思われがちですが、多くの企業がそう思っているうちに取り組むことで、利益を生み出すことができることを伝えながら、具体的に取り組んでいくことを伝える一冊です。
 
 「脱炭素、カーボンニュートラルやGXとの言葉が増えているが、ウチの会社には、ちょっと遠いよね」「新たな言葉が、どんどん出てきていて、インターネットで調べても情報が多すぎて、よくわからない」「必要性は解るのだけど、一体何から取り組むべきか解らない」

 本書は、こういった中堅・中小企業の生の声をコンサルティングの現場で多く耳にして、その課題解決の想いからスタートしました。いま、中堅・中小企業の現場レベルで起こっていることは、将来への不安感と短期的な収益性改善に多くの課題を抱えています。インフレ型となっている経済状況であり、原材料や資材価格の上昇、人員不足と人件費負担増と続き、他人のことや地球のことよりも、先ず短期的な収益性改善が最優先であるとの考えにも陥りがちです。 
 
 だからこそ、脱炭素経営をスタートして頂きたいと思います。短期的な収益性を改善する為に、脱炭素経営なのです。そして中長期的にも、新たな収益を生む為に、新たな人の採用や組織の為にも脱炭素経営でもあるのです。取り組まないことが企業にはリスクにもなるのですが、一方でビジネス機会であることは間違い無く、約束された市場と言っても過言ではないでしょう。しかし、新たなことを始めるには時間も工数も限られているなかでは、効率的に進める必要もあります。更に言えば、経営に関することなので、最大の効果を目指さなければなりません。 

 本書では中堅中小企業が必要となる、拡がった脱炭素の情報に関する一元化と、具体的な取組のステップまでを記載しております。情報過多の現在、自らが欲しい情報に辿り着く事を難しくなりつつあり、その結果多くの情報を整理することにも時間を要してしまいます。それ故に経営面を軸としていき、収益性と具体性の視点を重要視してきて、読まれた方が「参考になった」「勉強になった」ではなく、本書がコーチとなり具体的に内容を実施していけることを願ってきました。 

 社会性を追求した結果に収益性がついてきます。社会性の追求こそ、企業のあるべき姿であり、そして現在、企業に求められていることが脱炭素なのです。
是非、本書が脱炭素経営を取り組む契機として活用頂けることを願っております。

【書籍目次】
はじめに
第1部 中小企業のための脱炭素経営入門
第1章 脱炭素経営とは何か
第2章 脱炭素経営で中小企業はどう変わるか?
第2部 脱炭素経営のロードマップ
第3章 温室効果ガス排出量の可視化
第4章 ポテンシャル把握
第5章 脱炭素ロードマップの策定
第6章 脱炭素施策の実行
第7章 ステークホルダーへの情報開示
第3部 注目の技術
GHG排出量算定クラウド/余剰循環型スキーム/自己託送スキーム/オフサイトPPA/バーチャルPPA/顔の見える電力/カーボンフットプリント
第4部 企業の取り組み事例
【脱炭素経営】 脱炭素を武器に顧客開拓「大川印刷」/【GX】紙くず屋、プノンペンでBARをやる「サンウエスパ」
付録 脱炭素用語集

2022年11月25日 9:43 AM

廃棄物処理業の脱炭素経営⑩「脱炭素経営にて組織を変える」

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「脱炭素経営にて組織を変える」の続きです。

(3)脱炭素をパーパスへ
 パーパス経営という言葉が、近年は多く聞かれることになったと思います。「自社は何故存在するのか?」とする存在意義や、自社と社会との関わりについての社会的価値、社会に対する志を明確にして、それを経営の基軸に置くものでもあります。これには経営層と従業員が議論し、結果としての共有と共感が必要となっていきます。そして企業経営においても、これまでステークホルダーに対して、短期的収益性を意識してきた資本の考えから、社会が持続可能性を求める考え方への変化にも繋がってきていると思います。廃棄物処理業においてもパーパス経営が必要となっているのは、従業員の多くが社会的意義を認識しているのに、それが自社で働くことの意義として合致していないことが多く見られるからでもあります。、
 これは会社としての視点だけでなく、拡がる社会不安の中で従業員自身が「何故、この会社で働くのか?」「何の為に働いているのか?」と問い、その答と自社のパーパスが一致させることが、会社の収益性にも繋がっていくこととして、企業価値向上としても重要になっているのでしょう。その人にとって、生きる目的がパーパスならば、会社のパーパスを達成させることを一緒に目指せることで、働くことへの価値が大きく変わり、
 実現したい未来について、個人としての夢を実現する未来は夫々にあると思いますが、実現したい未来の社会となると、今よりもより良い社会であることを望むのではないでしょうか。しかし現実の社会では戦争も起こり、エネルギーの不安定さやサプライチェーンの課題まで浮き彫りになっています。加えて気候変動における影響が現れてきており、未来の社会が現状の延長では今よりも決して良いものにならないことが解ってきています。しかし、その未来について自分自身が何かできるかと考えても遠く大きな問題でもあり、自らでの行動での変革を難しく感じがちです。それを企業活動で変えることが出来、その役割の一部を働くことで担えるならば、新たに働く楽しさや充実感と目的が生まれていくことになります。  
 しかし決して忘れてはならないことは、経営にとって社会性の追求が収益性であり、つまり社会性と収益性を両立させることでもあります。パーパスとして脱炭素は重要なテーマではあるのですが、その達成の為に、如何に企業活動を通して収益を上げていくことが重要な観点です。脱炭素経営の中には、このパーパスが定まっていることが前提であり、そのパーパスを達成する集団が組織にもなっていきます。それ故に未来型組織としては、このパーパスが社内に浸透している組織でもあります。そして大切なことは浸透ではなく、共感している社員で構成されている組織であることです。採用から脱炭素実現訴求で取り組んでいけば、当然入社の段階から思いは一致しやすく、また入社後も周囲が皆同じ考え方の為に深い共感の維持も可能ですが、既存の組織に展開しようとすると当初は捉え方にも差が出てくるものとなります。だからこそ、脱炭素経営に取り組む際にパーパスの社内展開には、時間と工数も掛けて丁寧に行い続ける必要があります。そして当初は小さかった共感の輪が、次第に大きくなることで必ず加速するタイミングも訪れていきます。そうなれば、脱炭素経営を達成できる組織が構成されていき、取組の精度とスピードも上がっていくことでしょう。夫々が指示や命令で動くのではなく、企業と自らのパーパスを達成する為に動くこと、働くことは生産性での変革は勿論、企業文化でさえも変えるものとなっていきます。脱炭素を軸としたパーパス経営に、是非取り組んで欲しいと思います。

2022年10月25日 10:27 AM

特別編「廃棄物・資源・浄化槽ビジネス研究会10月例会振り返りレポート」

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 今回は10月開催の、廃棄物・資源・浄化槽ビジネス研究会の振り返りレポートをお届け致します。当日の講座のなかで、「サーキュラーエコノミー時代での戦い方」について前半部分を抜粋してレポート致します。 
(1)サーキュラーエコノミーとは
①サーキュラーエコノミー(Circular Economy)
・EUが2015年「European Commission」として公表
・日本語訳として「循環型経済」
・2018年経済産業省が線形経済(Linear Economy)から循環経済(Circular Economy)として発表
・2020年EUにて「製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、生産と消費における資源の効率的な利用を促進することによって資源利用に伴う環境影響を低減し、廃棄物の発生ならびに有害物質の環境中への放出を最小限にする経済システム。3R対策の優先順位を適用することを含む。」と定義
・従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動である(経済産業省)
・廃棄製品や原材料などを新たな資源として経済活動の複層段階で循環させる「クローズドループ型」の経済モデルへの転換を目指す動き
・世界市場としては500兆円の経済効果があると言われている
 
 同語については、数年前から既に拡がっていた言葉ではあったものの、私自身が当時は正直ピンときていない部分があったと思います。日本とEUとの法を含めた廃棄物行政、また歴史を含めた廃棄物文化の違いとして、ガラパゴス型進化をした日本にとっては展開の難しい面が多いと感じていたこともあります。そして「循環経済」の言葉は日本でも定着しており、資源の有効利用や3Rの優先度も随分と進化してきたと思っていたからです。 
 しかし、改めて資料を追い続けていくと見えてきたことは、目的が脱炭素化であったことです。既に多くの方は気付いていたことだと思いますが、カーボンニュートラル化が目的であり、その手段としてサーキュラーエコノミー化を必要としていたのです。そして私が思っていた循環経済は線型経済であり、更に視点を変えて小さな輪が生まれ、その中で経済が新たに動いていくことでもあったのです。点で押さえることが多かったリユースやリペア、そしてリサイクル材の活用も、全てが繋がっていくものでもあります。 
 既にご承知の通り、EUでは1975年の「廃棄物枠組み指令」において「廃棄物ヒエラルキー」の考えがあり、逆三角形の底辺に⑤「適正処分・廃棄(Disposal)」が置かれ、もっとも優先度が低いものとなっています。つまり、ただ捨てるだけは最後の手段なのです。その上に、④「回復・他の再生方法(Other Recovery)」⇒③「リサイクル(Recycling)」⇒②「再利用(Preparing for re-use)」と続き、ここまでが廃棄物(waste)のゾーンとなります。その線引きの上に製品(product)としての①「発生抑制(Prevention)」が存在していました。2010年に公表された以降10年間の欧州の成長戦略「Europe 2020」において、3つの柱のひとつ「sustainable growth (持続可能な成長)」と7つのフラッグシップイニシアチブの一つとして、「資源効率(Resource efficiency)」を推進する方針が示されます。2011年「資源効率」を具体化した「資源効率性のあるヨーロッパに向けたロードマップ」が発表され、生態系サービスの見える化や、市場メカニズムの活用、炭素税など税制面でのアプローチなどとともに、リサイクル率の向上が掲げられました。2014年「EU Resource Efficiency Scoreboard 2014」や「Progress Report on the Roadmap to a Resource Efficient Europe」にて進捗評価が発表され、加盟国の資源効率の進捗度を評価する一方で、廃棄物を資源として捉え直すサーキュラーエコノミーへの移行の必要性が記されます。そして2014年から2020年までの「第7次環境行動計画」でもサーキュラーエコノミーへの移行が明確に打ち出されます。2015年12月、欧州委員会は2030年に向けた成長戦略の核として、サーキュラーエコノミーパッケージを承認し、翌年2016年6月には54の具体的行動を策定し、具体的なアクションプランを採択します。2018年5月、欧州委員会は2015年サーキュラーエコノミーパッケージに基づき廃棄物管理とリサイクルに関する新ルールを決定。廃棄物の発生抑制、及び一般廃棄物と包装廃棄物のリサイクルの大幅な改善を図り、埋立てや焼却よりも発生抑制、再使用、再生利用を優先させる「廃棄物ヒエラルキー」の具体的な措置をEU加盟国に義務付けていきます。2020年3月、欧州委員会はEU全域でのサーキュラーエコノミーを加速する為の新計画「新サーキュラーエコノミー行動計画(New Circular Economy Action Plan)
」を公表しました。「規制」「義務付け」「指令の強化」という言葉が並びますが、「2050年にカーボンニュートラルを実現させ、自然環境を守り、競争力を高めるために完全なサーキュラーエコノミーへの転換が要求されている」と述べた通り、行動計画の目的はサステナブルな社会を実現させるとともに、環境負荷と経済成長のデカップリング(分離)を図ることであり、そのための支援強化策も取り揃えています。
 これらEUの取り組みを見ていると、確かに日本でも進めなければならないテーマが存在していることも分かります。しかし、その為には廃掃法が変わるだけでなく、政治的な動きと企業とが連携をしながら障壁を超える必要もあります。
 そしていま、経済産業省と環境省が連携をして、新たな日本での取組が始まりだしているのです。

 今回は抜粋版として前半の導入部分となっていますが、このようなことが学べる、是非廃棄物・再生資源・浄化槽業ビジネス研究会にもご参加いただければ幸いです。。

  

2022年9月26日 9:15 AM

廃棄物処理業の脱炭素経営⑨「脱炭素経営にて組織を変える」

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脱炭素経営が組織を変える
(1)脱炭素経営で企業文化・社風を変える
脱炭素経営への各社取組状況から見た際に、企業の組織体としては一見関係の無いように見えてしまうかもしれません。しかし取組によって、企業文化や社風を変えるチャンスを持っています。既に第1章1「中小企業だから脱炭素経営に取り組むべき」に述べた通り、脱炭素経営を使って長所伸展型組織に変えていくことができます。
 理念やビジョンの浸透に課題を抱える会社は多いものです。皆が暗記をしていても、それが言動の骨格になっていないことや、価値観としてまで統一されていないと感じているからです。自社の社会に対しての役割が明文化されていることも多いものの、社員個々にはそれが遠いものとなっていることが見受けられます。例えば自社の業務に社会性を感じていても、自分の業務を通しては感じられず、単純な作業の視点となっており、とても中長期視点で考えられないといったケースです。また理念だけでなく、SDGsやISOへの取組についても業務と切り離されており、興味も無く手間と感じている姿も散見されます。
 これらの課題の根幹は、理解できない社員が悪いのではなく、経営としての教育面への取組にあると思っています。皆、頭では理解をしていても心では納得していないからでもあります。理念やビジョンが、個々の行動へと具体的になるまで示し、理解ではなく納得させることに注力しなければなりません。その際に手段と目的の逆転化は避けなければなりませんが、この行動までの落とし込み化と理解迄の繰り返しを不得手としていることが多いように思われます。当然ながら業務を優先して、更に生産性や効率性からも時間を掛けることは出来ないとなっていることもあります。そして最大の敵は、諦めでもあります。所謂「仕方がない」病に陥る時です。「皆、業務に忙しいから仕方がない」「ウチの業種(会社)では仕方がない」「彼等に言っても仕方がない」と出来ない理由を言葉で発し始めた時が症状です。「仕方がない」病に陥らない、抜け出す為には強い理念への想いと実行力のみです。その実行力とは、PDCAの実行となるDOこと「D」にフォーカスが当てられますが、むしろ「P」ことPLANが重要となっております。「D」を前提とした「P」になっていない為に、上手くPDCAサイクルがまわっていないのです。その「P」について脱炭素経営を手段として、理念やビジョン達成の為のロードマップとして考えれば、軸は一本化されていきます。全ての行動が脱炭素経営に則り、それを到達されるときこそ、会社と夫々のビジョン達成となることを繰り返し伝え、皆が納得していくことを取組続ける必要があります。
 脱炭素経営を理念やビジョン達成の手段として、統一された社風や文化となることを目指してください。
(2)脱炭素経営で未来型組織へ変える
 脱炭素経営は近い未来への取組でもあり、組織も当然未来型である必要があります。脱炭素経営への取組を契機として、未来型組織に取り組んで欲しいと思います。
その際の最初に取り組むことは、組織の意味についての社員理解となります。これは脱炭素経営に関係無く必要なことなのですが、中小企業ではそのデザインや部署の意味も含めて曖昧になっていることが多いものです。数年前にISOの為に作成したままで実態と違うことや、部署の役割が不明確であること、役職者が兼務だらけになっていること、退職者の名前が残っていることや逆に入社者の名前が無いこと、等々の実態が見受けられます。だからこそ、部署や役職の役割を再定義することが必要となります。
 そして組織のデザインも、現状の組織から昇格者を決める延長型組織構築を止めることも必要となっていきます。昇格者の為に部署をつくるのではなく、理念やビジョンを達成する為にまわしていくことが組織の役割でもあります。
 未来型組織として、脱炭素達成の為に求めるもの、つまり経営戦略に沿った未来の組織図として組織計画を構築していく必要があります。10年後や5年後に思い描く自社の状態に対して、その為に必要な組織があり、現在の姿とのギャップが取り組む為の課題にもなっていきます。そして真の未来型組織に取り組む為に、ティール組織を目指すべきだと思います。脱炭素経営にて、先ずはGREENとなる「価値観の共鳴による統治」となり、そしてTEALとして、組織の目的実現の為にメンバー全員が信頼に基づき変化するような、指示命令系統不要な組織、自律分散型組織となること、組織の存在目的に合わせた持続可能な変化ができることを目指して欲しいと思います。