本日は関東の産廃のご支援先でした。トップと話をしていた折に、自社の差別化戦略の方向性の話が出てきました。
我々船井総研でもご支援先の差別化戦略として、「非競争分野」「独自固有の長所」を作り、そこを徹底的に伸ばすことに注力することは多いものです。もちろん、多くの廃棄物処理業が差別化ができないことに困っており、何が差別化になるかを常に模索していることも確かです。営業マンとロールプレイングや営業ツールを作る際にはそれが明確に現れ、「よくよく考えると、ウチって強みないんですよねー」と言われる人が殆どといって良いでしょう。たまに出る内容は自分が思う差別化であり、他社との差別化、そして一番は顧客視点での差別化になっていないことです。「ウチはキッチリやっていますよ!」は当たり前のことであり、「ISOをやっています」は競合となる会社の多くが取組んでおり、「安いです」は顧客視点であることはあっても愚かなこととなるでしょう。
差別化に向かう際には、付加機能型、増殖型で向かうのは差別化にならなくなるとも、ハーバードのビジネススクール教授でもあるヤンミムンの著書「ビジネスで一番、大切なこと」でも言われております。異質的同質性とも言われ、消費者を向いていないことが多くなってしまいます。付加機能型とは、当初の機能をよりよくする為に機能を追加していくことで起こります。、競合他社の機能や消費者の求める機能を次々に付加し、商品力を高めていくのですが、結果として差別化というよりも、消費者にとって解りにくいものになっていることが多分にあるとも。携帯電話などは最たるものかもしれません。電話がどこでも喋れることが主目的でありながら、メールやインターネット、そして写真やお財布携帯、テレビ、音楽、ゲームまであるのですが必要なものは限定されているのでしょう。スマートフォンが流行していますが、それは電話としての機能を飛び越えて、情報を持ち歩けることが主目的なのでしょう。
付加機能型は、必ず元の機能に戻っていくものです。瞬間的な付加機能の増加は、結果として消費者に受入れられないものとなり、消えていくこととなっています。子供の頃にあったもので、ラテカセとしてラジカセにテレビがついたものは消えていきました。ラジカセの機能は、主目的として持ち運べ、コンパクトに聞けることです。テレビがついて重くなり、高価になったものは受入れられなくなりました。某食品会社のカーップラーメンでもありましたが、ガリバーとなるカップラーメンが3分であることに対抗して、1分でできるとうたい文句にした商品も消えていきました。「1分でできて、そこそこの味なら良いでしょう」ではなく、食の主目的は「美味しいものを食べる」ことであり、差別化は味でなければならないのです。このサイクルには、企業が新たな価値提案の際には、消費者が喜ぶ⇒競合が真似をする⇒新たな価値が標準⇒新たな価値提案となり、本当に消費者が求めていない機能になっていくものです。
増殖型も当初の製品から選択肢を増やしていく差別化を狙う方法ですが、コーラがダイエットコーラとなり、ライトになりと増えていったものの、消費者が本当に差別化とは思えなくなり商品は絞られていきました。見逃していたターゲットを攻めようと、細分化していくターゲットに向かうと意味ある違いには行き着かなくなります。
これらが全て消費者の目にとって、「違いがわからなくなる」といった状況となってしまうのです。
競合他社と比較することも間違いではありませんが、「圧倒的差別化」となると廃棄物処理業には難しいのも現状です。付加機能型の考えならば、あらゆる処理が可能となる処理施設になる場合、収集から中間、最終、再資源化施設と複数の業態に向かう場合などもそうだったでしょう。建廃業が住宅だけだったものが、設備業、内装工事業、リフォーム業のそれぞれのターゲットに適した処理施設になることは、増殖型になっていくのでしょう。総合型リサイクル施設もこのタイプかもしれません。
廃棄物処理業にとって本当の差別化とは何なのでしょうか?
地域や規模、そして現在の取組み内容から文化、顧客、そして何よりも社員の1人1人が違う中で、同じビジネスモデルが嵌るわけではありません。しかし、大きな方向性としては処理施設や機械に頼る差別化ではないことは確かでしょう。ソフト力が一番の差別化となり、しかしそのソフト力が属人的でないことが要素になるのではないでしょうか。更に、商流上の上流もしくは下流のビジネスも付加していくことにより、商売の入口の確保をしていくことでもあると思います。
今後の日本経済の流れから読めば、人口減少による着工数減少、消費減退、国内製造業の海外シフト、そして廃棄物減量化の取組みも踏まえ廃棄物減少は否めません。その際にあるのは、現業での延長ではないことも差別化かもしれませんね。